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2004/02/17

梶井基次郎の生まれた日

今日は昭和文学史上の奇跡と言われた作家、梶井基次郎の生まれた
日です。

梶井基次郎と言えば、朱雀は『檸檬』と言う小説にとても感慨深いもの
があります。

朱雀がデカダンに嵌りはじめ、まるでパズルを埋めてゆくように手当
たり次第デカダン小説を読み漁っていた頃、それらの書籍が充実して
いる本屋に、僅かな小遣いを握り締めてはよく出かけていました。
そこに行くと何ともいえないドキドキ感と、胸がきゅっと締め付けら
れるような切なさがあって、時間の許す限りそこで過していました。
欲しい本は山のようにあるのですが持ち合わせは僅かで、いつも散々
迷って数冊買って帰るのですが、そのたびに今ここが火事にならない
かなぁと、不埒なことを思ったものです。
そうすれば手当たり次第、好きな本を持って逃げるのに・・・(笑)

ある日どうしても欲しい本が10冊ほどあって、その日買えるのは精々
2冊で、でも中々2冊に絞ることが出来ず、10冊の本を前に随分と長い間
迷っていたんです。
で、漸く選んで買うことにしたのですが、残りの8冊を元の場所に戻す
のが何故か嫌で、その本を順番に積み上げたんです。
そうしたら凄く気持ちよくて、他にも欲しい本を引っぱり出して来て
更にその上に積み上げました。
お気に入りの本で出来た塔はなんとも不思議に輝いて見え、そこには
特別の空気が流れているようにも思えました。
そして朱雀は本をそのままにして本屋を出て、帰りの電車の中で本の塔
がずっとそのままそこにあれば、特別な世界の入り口がこっそり開く
かも知れないと、思わず笑ってしまいました。

その後、基次郎の小説『檸檬』を読んだのですが『檸檬』には書店で
画集を積み上げ奇怪で幻想的な城を築き、その上に檸檬を乗せ、何食わ
ぬ顔をして外に出る場面が書かれていて「丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろ
しい爆弾を仕掛けてきた奇怪な悪魔が私で、もう十分後にはあの丸善が
美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなに面白いだろう」
という結末になっていました。
その檸檬の草稿には『私はそれにこの上ない満足を感じた』と書かれて
いて、ああ、同じなんだと妙に感動したのを覚えています。

当時の朱雀には、小説の中に存在する自分と同じ思いを抱えた人物を
見つめる事が最高の快楽で以来、基次郎は一気に朱雀の特別な思い入れ
のある作家の一人になりました。

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