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2003/10/06

久生十蘭の話

今日は久生十蘭(ひさお じゅうらん)の命日です。
夢野久作、小栗虫太郎、久生十蘭の三人は朱雀の好きな日本の幻想
小説家です。
名前はクウ・トリーヌという作家を偲んで付けたそうですが、この作家
については、全く知りません。

また、十蘭はルートヴィヒ二世の死に拘ったり、上田秋成の『雨月物語』
をもじった『無月物語』という小説を書いたりと、かなりルナティックな人です。
『鈴木主水』で直木賞を受賞していますが、今日は朱雀の好きな短編小説
『月光と硫酸』を紹介します。

パリの日本人留学生・十蘭が、猛勉強の所為で神経衰弱にかかり、
コートダジュールに静養に行きます。
医者の「庭の蟻でも見てのんびりしていなさい」と言う忠告にそのまま
従い、一日中、庭の蟻を見続け、仕舞には蟻を苛めるのに精を出す
ようになります。
そんなある日、隣の別荘からオートバイのもの凄い排気音が聞こえて
きて、いい加減怒りが込み上げた頃、排気音に混じり銃声が聞こえた
ような気がしました。確かめるでもなく、気になったまま一夜を過ごし、
翌日、いつものように蟻を苛めようと庭に出ると、どうした事か蟻が一匹
もいません。
その夜、見事な月が出ていて、それに惹かれた十蘭が庭に出ると、石垣
のそばで奇妙なものを見つけます。
そこには、青白い輝きを放つ一坪ほどの月が落ちていました。大急ぎで
母屋の老婆に知らせると、町中の人が集まってきます。
皆で感嘆の声を上げながら見ていると、知ったかぶりの先生が、これは
月ではなく、濃硫酸が零れたのだといいます。
すると村人が、月なら話が解るが、濃硫酸がこんな所に落ちている訳が
ないと反論します。
先生曰く、隣の別荘で捨てた硫酸がこちらに染み出してきたのだと言い
返します。
村人も、負けじと、死骸を溶かす訳でもないのに、なぜ硫酸を隣の別荘
で使うんだ!とやり返します。
それを聞いていた警部が「えっ」と叫んで飛び上がり・・・
翌日の新聞に、隣の別荘の持ち主が、売り別荘の広告を出しては、
手続きのあと買主を庭で銃殺し、湯船の濃硫酸で死体を溶かしていたと
いう記事が載ります。

この小説はテンポがよく、家主の老婆と十蘭の会話が面白いんです。
月が落ちていると報告した後「あなたが私の所へ来てまともな事を
言ったのは、これが初めてだ」と言うくだりは笑えます。興味のある人は
読んで見て下さいね。

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