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2003/08/31

死霊の恋/ゴーチェ

今日はフランスの詩人であり幻想小説家でもある、テオフィル・ゴーチエの
生まれた日です。
ゴーチェはロマン派の詩人であり小説家でもあるネルヴァルと高校の
同窓で、最初、画家を目指していましたが、後に文学に転向しロマン
主義や写実主義の影響を受けながら作品を生み出してゆきます。

ゴーチェの小説に「死霊の恋」と言う短編小説があるのですが、近頃、
朱雀のスパイラルのキーワードは「胡蝶の夢(どちらが夢でどちらが
現実か判らない)」で、先日も映画「ジェイコブス・ラダー」を紹介
したところなのですが、今日もまたそんなお話を。

これは、老僧の回想と言う形式で書かれた、若き日の恐ろしくも美しい
恋の物語なのですが、この作品が書かれたのは十九世紀中頃で、
ドラキュラ以前の吸血鬼の話でもあります。

簡単に言ってしまうと、主人公ロミュアルドは聖職者で、昼は忠実に
その仕事を続け、夜は吸血女(死霊)であるクラリモンドと退廃的な
愛欲に溺れた二重生活をおくる話なのですが、夢と現実の境目がとても
曖昧で「胡蝶の夢」のようになっています。

ロミュアルドが聖職者として、叙品式という栄えの日に、垂れていた頭を
偶然上げた事からクラリモンドと運命の出会いをします。
悪魔とも天使とも区別のつかない人間の眼には絶対に見られない
生命力、熱気、うるんだ輝きをたたえた瞳に一瞥され、すっかり魅入
られて、夢か現実か区別がつかないまま、昼と夜の全く違う生活を続け
てゆくのですが、最後は司祭のセラピオンが、クラリモンドの墓を暴き、
クラリモンドの死で終わってしまいます。

「不幸なかた、不幸なかた、あなたはどうして愚かしい司祭の言葉に
耳を貸したのです。あなたは幸福だったのではないの?」と初めて
会った時と同じ言葉を残して消えてゆくクラリモンド。
ロミュアルドは年老いた今もなお、そのことを惜しんでいて、最後に
「あなたも、絶対に女性を見つめてはいけません。常に眼を地面に
釘付けてお歩きなさい。
なぜなら、いかに、あなたが純潔冷静であろうとも永遠を失わしめる
ためにはほんの一瞬で足りるからなのです。」という言葉で締めくく
られています。

ゴーチェの小説には唯美主義の中で、サタニズムと官能美が色濃く
現れた恐怖に人を陥れるのではない怪談が沢山あります。
摩訶不思議な余韻に浸りたい方は是非、一度読んで下さい。

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